H先生と乳児院からの育児アドバイス(統合失調症の妊娠出産育児体験記15)

昔、診察のときにH先生は育児についても大切なことを一生懸命アドバイスしてくれた。

H先生は別に小児専門の精神科医ではなかったし、実は臨床ばかりやっている先生でもなく、精神疾患をもつ人が地域で生きていきやすいような仕組み作りに日々奮闘している先生だった。

そんなH先生から上の子がお腹にいるときにいただいたアドバイスで心に残っている言葉があった。

「はなさん、赤ちゃんは3歳まではとにかくかわいがって育ててください!仕事なんていいからとにかくかわいいかわいいとかわいがって育ててください!モンゴロイドは特にそうです!

人間は3歳くらいになると脳の中で神経回路の刈り込みを行うようにできています。だから3歳以前の記憶が残らないようになっているのですよ。

それまでにとにかくかわいがることが大事なんです!」

それを聞きながら、私は昔の担任の先生が言っていたことを思い出した。

「昔いた学校で、施設で育った子供たちの担任になったことがあるのだけど、その子たちはあるとき動けなくなることがあるのよ。なぜだかわからないのだけど、その子たちはどうしても前に進めなくなって、自分から動くこともできなくなって、じーっとしてしまう。そんなときは、その子たちをぎゅーっと抱きしめると、しばらくするとまた動き出せるようになるんだよ。」

今だったら愛着障害とか言われるものなのか、子どもの小さいときの抱っことか、かわいがることは大事なのだろうと思って、できるかぎり抱っこしたり触ったり声をかけたりして育児するようにしていた。

今のところ子どもたちは自ら動き出して自ら考えて勝手に幸せを感じながら生活しているように見えるので、一応そこはクリアできたかな?とは思っている。

でも、下の子を産んでからは一人ではしんどくて、すごく気持ちも疲弊した。自分が仕事に復帰してからは毎日夜の9時頃まで残業しだしてしまったので、下の子の3歳までは自分だけでは抱っこしまくるなんてできなかった。そんなとき、実家の母親が、下の子と一緒に寝てくれた。私は当時、家に帰ってきてからも疲れ切っていて一緒に寝ることができなかったので、本当にありがたかった。

たとえ元気なお母さんであっても育児は自分ひとりだけではしない方がいいと思う。

ちなみに、育休中に慣れない夫の赴任地でよく利用していた育児相談があった。

親御さんの事情で育てられない子どもたちを預かるその土地の乳児院だった。

そこでは、当時24時間電話で赤ちゃんの育児相談を受けつけてくれていて、夜中に子どもが熱をだしたときとか胃腸炎になったときによく利用させていただいていた。

当時は24時間の小児救急相談が普及する前だったので、これにはとても助けられた。

下の子を産んで、一日中泣き続ける下の子と、赤ちゃん返りでやはり泣き続ける上の子を、睡眠不足と体調不良のなか一人で育児をして疲弊していたときがあった。子どもであってもそれぞれに個性があって、育てやすい子どもばかりでないと下の子を産んでから痛感した。乳児二人の育児に苦戦して、泣きながら「赤ちゃんがミルクを吐いてしまって~」と電話相談したときに「赤ちゃんと乳児院に来てみませんか?」と言われてそこに行ってみたことがある。

その乳児院は地域に開かれた乳児院で、本格的に預かるだけではなく、保育園の一時預かりのようなこともやっていて、特に理由がなくても預かるような事業もしていた。

先ほども書いたが、24時間の電話相談(しかも実際に育児の専門家の人が答えてくれた)もやっていたし、母親教室のようなこともやっていた。赤ちゃんといけるイベントのようなものもやっていた。

そのうえ、草刈りのようなボランティアも地域の人に募集していて、乳児院へのイメージを払拭しよう、もっと理解してもらおう、地域の人と子育てしようという考えの乳児院だった。

私が妊娠していたころは、ネットで「統合失調症 妊娠 出産 育児」とかで検索するとよく「自分でめんどうをみることもできないで施設に預けて!」みたいな記事を見た。

その「施設」に行ってみて、今の「施設」のすごさに驚いた!

そもそもどんな赤ちゃんにだって親が面倒をみられない事態になる可能性はある。そんなとき助けていただくことになる「施設」がどんなものか、世間のほとんどの人は知らない。

その土地の乳児院に行ってみて、私にアドバイスしてくれたのは、その乳児院の看護師長さん自らだった…

「ここでは、一人の赤ちゃんに対して一人の職員が責任をもって担当しています。」と言って、その看護師長さん自ら明らかに障害のある子どもさんを「私がみている子なの」と言って抱っこしながら現れた。

そして、そのお子さんを見ながら、私の下の子が泣き止まないときに「こういう方法をとるとが子宮の中のような感覚になって落ち着いて泣き止むのよ。」と言って、赤ちゃんを落ち着かせる最新の方法を教えてくれた。

児童虐待が問題になって久しいが、虐待にあうよりこの乳児院で見てもらった方が赤ちゃんにはよほど幸せでないのだろうか、と思ってしまった。

そのぐらい、施設の職員の方たちの赤ちゃんや母親への理解の深さを感じた。

統合失調症に限らず、今は誰でも育児をしていて孤独になりがちで辛さを抱え込んでしまうことが多い。

自分が限界を超えて疲れ切る前に、こういった方たちに助けを求めることは悪いことではないのではないかと思うようになった。

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